海外のクラウドファンディングで見つけたスマートウォッチ。デザインも機能も国内にはないタイプで、思わずポチってしまった。数週間後、箱を開けて電源を入れる。ここまではよくある話です。でも、この「電源を入れる」の直前に、実は法律的なチェックポイントがひとつ挟まっています。それが技適マークです。
技適マークとは何なのか、そもそもの話
技適マークとは、電波を発する機器が日本国内の技術基準に適合していることを示す証明マークです。結論から言うと、これがない機器を国内で電波を出す状態で使うのは、原則として電波法違反になります。スマートウォッチもワイヤレスイヤホンも、Wi-FiルーターもBluetoothスピーカーも、電波を出す機器はぜんぶ対象です。
なぜこんな制度があるのかというと、電波は限りある資源だからです。同じ周波数帯を勝手に使う機器が増えると、混信が起きて既存の通信や放送に影響が出ます。そこで国ごとに、この周波数ならこの出力まで、というルールが決められています。技適は「その機器がこのルールを守っています」という証明であり、国が発行するお墨付きのようなものです。
具体的な場面で考えてみましょう。海外メーカーが自国向けに作ったBluetoothイヤホンは、その国の電波法規には適合していても、日本の基準とは微妙に違うことがあります。出力がわずかに強かったり、使う周波数帯がずれていたり。だから「海外で普通に売られている製品」がそのまま「日本で堂々と使っていい製品」にはならないんです。
ただし例外もあります。電波を出さない機器、たとえば有線接続のみのイヤホンやUSBケーブルで充電するだけのガジェットには、そもそも技適という概念が関係ありません。技適が問題になるのは、無線通信の機能を持つ製品に限られます。ここを混同すると「うちの家電は全部危ない」と余計な心配をしてしまうので、まずは無線を使うかどうかで線を引くのがいいと思います。
買う前に、ちょっと立ち止まってみる
結論を先に言うと、海外通販サイトで無線機能つきのガジェットを買うときは、購入前に技適マークの表示があるかどうかを確認する習慣をつけたほうがいいです。面倒に感じるかもしれませんが、届いてから困るよりはましです。
海外の通販サイトやクラウドファンディングのページには、技適の情報がまず載っていません。当然です。向こうは自国の基準で商品を作って売っているので、日本の制度なんて気にしていない。レビュー欄を見ても「届いた」「使いやすい」という感想ばかりで、技適の有無に触れている人はほぼいません。ここが厄介なところです。
たとえば、海外の家電系クラウドファンディングでよく見る小型のポータブルルーター。バッテリーが長持ちで軽量、デザインもスタイリッシュ。支援したくなる気持ちはよくわかります。でも、そのページのどこにも「技適取得済み」の文字がないなら、日本国内でそのまま電波を出す使い方はグレーゾーンに入ります。ここは迷うところですが、判断に迷ったら「たぶん大丈夫だろう」ではなく「表示がないなら要確認」で動くほうが安全です。
一方で、国内の正規代理店を通して販売されている輸入家電なら話は別です。代理店が日本向けに技適を取得したうえで販売しているケースが多く、パッケージにもマークが印刷されています。同じブランドの同じ見た目の製品でも、個人輸入したものと正規代理店経由のものとでは、この一点で扱いがまったく違ってきます。
税関を通るとき、実は誰もチェックしていない
個人輸入したガジェットは、税関を通って手元に届きます。ここで技適の有無がチェックされるのでは、と思う人もいるかもしれませんが、結論としては、通常の個人輸入の範囲ではほぼチェックされずに通ってしまいます。
税関の仕事は、関税をきちんと徴収することと、輸入が禁止・制限されている物品を止めることです。電波法に適合しているかどうかは、税関の審査項目には基本的に入っていません。だから技適のないガジェットも、書類上は普通の荷物として扱われ、そのまま国内に入ってきます。
これが少しやっかいなところで、「届いてしまった」という事実が、「使っていい」という安心材料にはならないんですね。通関できたことと、電波法上問題がないことは、まったく別の話です。荷物が無事に届いた瞬間、つい安心して電源を入れたくなりますが、そこはいったん立ち止まる価値があります。
例外として、業として大量に同じ製品を輸入する場合は事情が変わってきます。個人が趣味で1台買うのと、販売目的でまとめて仕入れるのとでは、税関側の見方も、その後に必要な手続きも違ってきます。ここでは個人が自分で使うために1台だけ輸入する、というよくあるケースを前提に話しています。
箱を開けたら、まず裏面とメニュー画面を見る
手元に届いたら、すぐに電源を入れたくなる気持ちはわかります。でも結論としては、電源を入れる前に、まず技適マークの表示を探すのがおすすめです。
表示の場所は製品によってさまざまです。本体の裏側や底面に小さく印刷されていることもあれば、電池カバーの内側に刻印されていることもあります。最近のスマート家電では、本体に物理的な表示がなく、設定アプリやメニュー画面の中に電子的な表示として組み込まれているケースも増えています。この場合は「設定」から「認証情報」や「規制情報」といった項目を探すことになります。
実際の場面を想像してみてください。届いたばかりのスマートウォッチを充電して、初期設定を進めながら、ふと本体の裏側を確認する。マークが見当たらない。マニュアルにも記載がない。こういうとき、多くの人は「まあ小さいから見落としているだけだろう」と流してしまいがちです。でも、本当に表示がない製品だった、ということも普通にあります。
ここでの迷いどころは、表示が小さすぎて肉眼では判別しづらい場合です。虫眼鏡が要るレベルの小ささのこともあります。それでも「たぶんあるだろう」で済ませず、メーカーの公式サイトや取扱説明書のPDFで確認するくらいの慎重さがあってもいいと思います。数百円のガジェットならまだしも、日常的に使い続ける機器であればなおさらです。
技適なしで使うとどうなるか、そして数少ない救済策
技適マークのない機器で電波を出す行為は、電波法違反として扱われる可能性があります。結論としては、原則使わないほうがいい、というのが一番安全な立場です。ただし、まったく救いがないわけでもありません。
総務省には、研究開発や実験のために技適未取得の機器を一時的に使うための届出制度があります。海外から一時的に持ち込んだ通信機器を、限られた条件のもとで使えるようにする仕組みです。制度の中身は改正されることがあるので、興味があれば総務省のサイトで最新の内容を確認するのが確実です。ここで具体的な日数や条件を断定的に書くのは避けますが、「無条件でずっと使える」わけではなく、期間や用途に制限がある、という点は覚えておいてください。
具体的な場面としては、海外出張から帰ってきたばかりの人が、現地で使っていたモバイルルーターを日本でもそのまま使いたい、と考えるケースがわかりやすいです。多くの場合、そのルーターには現地の認証しかついていません。日本で継続的に使うつもりなら、国内向けに技適を取得した機種に買い替えるか、レンタルWi-Fiなど別の手段を検討するほうが現実的です。
例外として、訪日観光客が自国のスマートフォンをそのまま日本で使う場合は、また別の枠組みで扱われています。これは観光客の利便性のために設けられた特例であり、個人輸入したガジェットの話とは前提が違います。混同しやすいところなので、自分のケースがどちらに近いのか、一度整理してみるといいかもしれません。技適の話は地味ですが、知らずに使い続けるより、知ったうえで選ぶほうがずっと気が楽です。
